大本事件・第四提訴 第一回口頭弁論が開かれました。不気味な無人の被告席

 2019年12月20日、午前10時から、東京地方裁判所806号法廷にて、大本事件・第四提訴の第一回口頭弁論が開かれました。

 これは、第一提訴(大本萌景さんのご遺族とERAの弁護団が農業アイドルグループ「愛の葉Girls」の元運営、Hプロジェクトが大本萌景さんを自殺に追いやったとして提訴した裁判)に対して「事実無根の内容で提訴された、また事実無根の内容を元にERAの弁護士が記者会見したので名誉を毀損された」とHプロ側が訴えを起こした裁判です。(詳しくはひこうき雲の基調解説「下記1」をご覧ください。)

 民事48部 合議A係  事件番号 令和元年(ワ)27521

 裁判長 氏本厚司
 裁判官 鈴木友一
 裁判官 西條壮優
 書記官 上木麻里衣


 原告  Hプロジェクト

 原告側代理人   渥美法律事務所  渥美陽子 松永成高 宮本祥平

 被告  芸能人の権利を守る 日本エンターティメントライツ協会 (以下 ERAと表記)
     一般社団法人 リーガルファンディング
     
     被告弁護士

     佐藤大和 望月宣武 安井飛鳥 向原栄大朗 河西邦剛

     第一提訴原告  大本茂 大本幸栄 

     
  定刻通りに開廷し、傍聴人は10名ほど。約15分で閉廷しました。
この日、ついにERAの五人の弁護団は「透明」になりました。

 被告席が無人だったのです。

 原告側が10月11日に提出した訴状は第一訴訟の「訴状」が丸ごと甲号証になっていました。
つまり、第一訴訟の訴えそのものが不当であり、事実無根の内容だったという訴えです。
これに対する被告側の答弁は「追って認否」だと言う事でした。


 裁判長と原告弁護団の熱い議論が続く中、無人の被告席は不気味でした。弁護士としての被告であり、別訴で大本茂・幸栄さんの代理人を勤めている立場上、法廷に姿を表して、自らの潔白、大本家の主張の正当性を示すのが筋でしょう。

 散々ERAのHPで「芸能人の権利を守る」事に合わせて第一提訴を喧伝してきたんですから、それの訴えについて疑義があり、反訴に等しい形で提訴されたのですから、法廷に立たなきゃいけないでしょう。

 訴状では、ERAの情報宣伝活動で被った原告の被害状況が克明に記されていました。
社会的信用のある弁護士たちの訴えが世に伝播されたために起きた被害への提訴です。

 訴えられたんだから、それに答え、堂々と答弁しなければ、弁護士ではありません。
松永弁護士は裁判費用がかさみ、原告が疲弊する手法としての「裁判の引き伸ばしと思われても仕方ないでしょう」と被告側を非難していましたが、法廷から遁走した、裁判から逃げた、弁護士が、と言われても反論はできないでしょう。

 普段は弁護士のバッチを使ってマスコミを動かし、権威を振りかざすが、いざ訴えられたら逃げ隠れするとは、夏休みの宿題ができなくて押入れに隠れる小学生と同じです。


【裁判長、訴訟進行について困窮する】

 裁判長:今日は相手(被告)がお越しにならないので実質進めないんですけれど...
芸能人の権利を守る日本エンターテイメントライツ協会、これ一応ホームページで事業所が何とか法律事務所になっていて訴状送達されているんですが、共同代表理事が前提ですがお相手さんのほうは望月という方のみが代表なんですが、この辺り相手が来ないとわからないので、今日のところは伸ばしてもいいですか?


 民事7部(第一訴訟)の進行についての説明が松永弁護士と裁判長のやり取りが行われる)


裁判長:今日は延期すると言うことで良いですか

松永弁護士:望月弁護士が単独で代表するかと言うことができない可能性があると言うことですか

裁判長:そもそも委任状が出てないとダメなんですけれども望月さんが1人代表者で送達法が有効なのか相手が来れば聞こうと思ったんですけど、今日は来られないので...

 聞き取れず?

 (訴訟の代表者、訴状の送達、受け取りについての(訴訟の入り口についての)確認をしたい意向の裁判長と裁判をなるべく早く進めたい原告とのやり取りが続く)

 裁判長: 今日の答弁書は「追って認否」なんで次回期日なんですけど...私が言ってるのは入り口形式のことだけなんで...

 渥美弁護士:安井弁護士がいらっしゃれないというだけで...10月に提訴したものなんですね、それが第一回の実質的な答弁が3月になってしまうと言うのはさすがにちょっとちょっと伸びすぎじゃないかと...

 裁判長:わかりますよわかりますよ、調整つかない 今聞きましたから

 ERAと、望月弁護士との間での委任状のやり取りについて裁判長は直に聞きたいことがある様子でしたが詳しい内容はわかりませんでした。これはそのうち裁判資料に載ると思いますのでまた追記いたします。

 なんとか書面を出してもらって、それに対しての反論などで裁判を進めたい原告と、「口頭議論の口頭主義でやりますから」と相手が出廷してこそ、審理ができるとの裁判長の指針とで押し問答が続きました。

 次回期日が3月の20日頃になる、という話が出ると、渥美弁護士と松永弁護士が交互に立って裁判長に審理の進行を訴えました。

 裁判長は終始にこやかに対応していましたが、実質的な第一回口頭弁論が四ヶ月先まで伸びることに抗議する原告側に対して「なんでこんなに先なんだ、それはそう思いますよ」と困惑の極み。それに対して松永弁護士ははっきりと「(裁判の)引き伸ばしと思われても仕方ないでしょう」と不快感を露わにしました。

 それに対して裁判長は「引き伸ばしですよね。わかりますよ、わかります」と原告を気遣いつつも、「引き伸ばしだから、相手が出て来ないので強行して終結した判決ができるかというと、裁判所そんな勇気はないです」「無理ですよ」「究極的にいうとそうなりますよね」「気持ちはよくわかりますよ、裁判所の都合でないのでどうしようもないです。やりますか?どうしてもというのならやりますが?」と一時的にキレそうに。

 こうして原告と裁判長のやり取りだけが806号法廷に響きました。

 裁判長は今後の進行について、「うまくいくどうか、やっていないとわかんないですけど」(被告が来ないのでは)「我々に言われてもどうしようもない」と愚痴を言いながらも「事務連絡で(被告に)1月31日認否反論出してもらいたい。」と被告側に宿題を出すことを決め、さらに「7部の進め方で配慮する必要があるのか」と第一訴訟の進行も気になる様子でした。

 また、イライラする様子の原告側代理人に対して「(聞き取れず)なかなか一回目でここまでやっていただけることないので、裁判所としてはありがたいと思っています、ここまでやっていただいて、なんで被告がこういう状態になるのか、という気持ちはわかります」と労いの言葉をかけるのを忘れませんでした。そして被告の反論を待って実質な第一回目の次回期日(令和2年3月3日午前10時)が決まり、閉廷しました。


 下記1

◼️関係者の紹介(ひこうき雲の基調解説です)


 この裁判は愛媛県松山市で「ご当地農業アイドル」として活躍していた大本萌景さん(当時16歳)の自殺を巡り、その責任を問う為に、ご遺族が運営会社とその関係者を訴えている裁判に対して、運営会社(Hプロジェクト)が「第一訴訟の主張は事実無根である」としてご遺族とご遺族の弁護団であったERAの弁護士五人と、法人である「一般社団法人リーガルファンディング」と任意団体ERAを訴えています。
その第一回口頭弁論のご報告でした。

 第一訴訟原告弁護団はアイドルの権利を守り、芸能事務所との契約書を確立させる事などを目的とした任意団体「日本エンターテイメントライツ協会」( 以下、ERA)の代表理事たちで構成されています。

 そのうちの一人である望月宣武弁護士は有志の弁護士らと共に「社会的意義ある裁判の支援」を求めて裁判費用を一般から募る「リーガルファンディング」を立ち上げました。この裁判はその支援者たちの募金で運営されています。


 被告のHプロジェクトは農業法人。愛媛県の衰退する農業について若い人にも関心を持ってもらいたいと農業アイドルユニット「愛の葉Girls」(えのはがーるず)をプロデュース。
歌って踊って畑を耕す、という農業アイドルグループを運営していました。

 被告の佐々木貴浩氏はERAの弁護団から記者会見で萌景さんの自殺について責任者であるような指摘をされた事に対して「事実ではない」と反論しています。

 第一訴訟と第三訴訟の被告側の弁護団と第四訴訟の原告弁護団は渥美陽子弁護士が代表を務める
 「あつみ法律事務所」
   
 第一訴訟 大本萌景さんのご遺族とERAの弁護団がHプロジェクトを訴えた裁判
 第二訴訟  愛の葉Girlsが萌景さんの死後、移籍した広告代理店、件イベント会社の「株式会社フィールド愛の和」がご遺族とERA、リーガルファンディングを訴えた裁判。これは第一訴訟の被告から外れることで、取り下げ
 第三訴訟 大本萌景さんのご遺族が賃金未払い訴訟でHプロジェクトを訴えた裁判
 第四訴訟  Hプロジェクトが第一訴訟は事実無根だとして、ご遺族と ERA、リーガルファンディングを訴えた裁判。個別に望月宣武弁護士に原告の名誉を毀損したとして33万円の損害賠償請求があります。